藤見よいこ『半分姉弟』が大賞、夜ふかしマンガ大賞2025
2025年10月16日 13時21分更新
文藝春秋のウェブメディア「CREA WEB」は10月15日、第4回「CREA夜ふかしマンガ大賞2025」の受賞結果を発表した。第1位には、藤見よいこの『半分姉弟』(リイド社)が選ばれた。
『半分姉弟』は、異なる文化や価値観の中で生きる登場人物たちが「わかりあえなさ」と向き合いながら、それでも共に生きようとする姿を描いた群像劇。選考委員からは「違いを受け入れ、理解し合おうとする尊さを感じる」「現代社会の分断をリアルに描きながらも、温かい希望を残す」と高い評価を得た。
「CREA夜ふかしマンガ大賞」は、夜のひとときを漫画とともに過ごす大人世代の女性を意識して2022年に創設された。電子書籍の普及で“夜ふかし読書”が一般化する中、眠る前に日常を忘れさせてくれるような作品を称える企画として毎年開催されている。今年は初めて15名のマンガ編集者を選考委員に迎え、さらにテレビプロデューサーの佐久間宣行氏、漫画家のつづ井氏、お笑い芸人の菅良太郎氏(パンサー)が特別選考委員として参加した。
大賞作『半分姉弟』は、フランス人の父と日本人の母を持つ主人公・米山和美マンダンダの視点で、家族や社会との関わりを通じてアイデンティティの揺らぎを描く。藤見氏は「まだ語られていない物語が世に出る後押しになればうれしい」と受賞の喜びを語った。自身も多文化的な背景を持つ藤見氏の体験が、物語の真実味を支えている。
ランキングでは、2位に清野とおる『壇蜜』(講談社)、3位にイシコ『邪神の弁当屋さん』(講談社)、4位に児島青『本なら売るほど』(KADOKAWA)、5位に藤原ハル『元気でいてね』(祥伝社)が続いた。いずれも現代社会の孤独、家族、自己の再生など、幅広いテーマで共感を呼ぶ作品が並んだ。
「CREA夜ふかしマンガ大賞2025」ベスト10
1位 『半分姉弟』藤見よいこ/リイド社
2位 『壇蜜』清野とおる/講談社
3位 『邪神の弁当屋さん』イシコ/講談社
4位 『本なら売るほど』児島青/KADOKAWA
5位 『元気でいてね』藤原ハル/祥伝社
6位 『おかえり水平線』渡部大羊/集英社
7位 『バルバロ!』岩浪れんじ/双葉社
8位 『楽園をめざして』ふみふみこ/講談社
9位 『ごはんが楽しみ』井田千秋/文藝春秋
10位 『寿々木君のていねいな生活』ふじもとゆうき/白泉社
「夜ふかしマンガ大賞」は、単なる人気投票ではなく、作品の世界観やメッセージ性を重視する点が特徴だ。CREA WEBでは特設ページを開設し、受賞作品の紹介や特別インタビューを順次公開している。スマートフォン1つで新しい世界に浸れる時代、深夜のひとときに寄り添う物語として、今年も多くの読者の心を灯すことになりそうだ。