運用額減でも満足度過去最高、ネット証券が主役に
2025年7月28日 10時40分更新
J.D.パワーは2025年7月15日、「2025年個人資産運用顧客満足度調査」の結果を発表した。本調査は、直近1年間の主利用金融機関における個人資産運用に関する顧客の満足度を測定するもので、市場変動が激しい時期にもかかわらず、総合満足度が最高水準を維持し、ロイヤルティも横ばいで推移していることが明らかになった。
特に2024年8月の株価急落や米国の通商政策への警戒感など、この1年間は株価や為替の変動が比較的大きい年であり、投資信託や株式で運用額が減少したと回答した人が約20%に上り、前年から10ポイント以上増加している。これは市場の不安定さが個人の資産形成に直接影響を与えたことを示唆している。
このような厳しい市場環境にもかかわらず、対面証券、全国系銀行、ネット銀行の総合満足度は横ばいだったが、ネット証券では14ポイントと大きく上昇する結果が見られた。この満足度向上は、多くのネット証券が手数料無料化やポイント還元などを推進し、低コストで魅力的な商品・サービスを提供する戦略が顧客に評価されたことに起因すると考えられる。市場が不安定な時期においては、運用コストの低さが顧客の収益に直結するため、その重要性が今まで以上に認識されたと分析されている。

ファクター別では、「手数料・金利」で20ポイント以上、「商品・サービス」、「口座情報」、「顧客対応(オンライン・コールセンター)」で10ポイント以上の向上が見られた。特に、「口座で提供されている情報」の質、オンラインでの「見たい情報の探しやすさ」や「掲載内容のわかりやすさ」、そして昨年評価が低下したコールセンターの「電話の繋がりやすさ」が大幅に改善したことが、ネット証券の総合満足度向上に寄与している。これは、デジタル化されたサービス提供の高度化と、顧客のニーズに合致した価値提供の重要性を浮き彫りにしている。

また、2024年8月の東京株式市場の株価大幅下落時において、金融機関からの市場状況や今後の見通しに関する連絡や案内の有無が顧客満足度に大きな差異をもたらすことが確認された。特に、提供される情報が「役に立つ」と感じられるかどうかが重要であり、「ある程度役に立った」情報と比較して「役に立った」情報の場合、オンライン経由で80ポイント以上、人を介した連絡では140ポイント以上も満足度に差が出た。顧客が必要としている情報を見極め、効果的なチャネルを通じて提供することが、顧客の不安を軽減し、ひいては金融機関に対する信頼と満足度を高める鍵である。
今回の調査における各部門の総合満足度No.1は以下の通りである。
<対面証券部門>
野村證券(608ポイント)
「顧客対応」、「商品・サービス」、「口座情報」の3ファクターで最高評価を得た。
<全国系銀行部門>
三井住友銀行(602ポイント)
「商品・サービス」、「口座情報」、「手数料・金利」の3ファクターで最高評価を得た。
<ネット証券部門>
SBI証券(653ポイント)
「手数料・金利」、「商品・サービス」の2ファクターで最高評価を得た。
<ネット銀行部門>
auじぶん銀行(640ポイント)
「手数料・金利」、「商品・サービス」の2ファクターで最高評価を得た。
本調査は、民間の銀行、証券会社で投資信託や株式などの資産運用を行っている全国の20歳から79歳の個人投資家を対象に年に一度実施されており、今回で14回目となる。調査回答者数は10,763人であった。
J.D. パワーの調査の詳細については、以下のウェブサイトを参照。
https://japan.jdpower.com/ja/our-benchmarking-study-methodology
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