NTTのLAM技術とドコモのデータ基盤が融合。「どうしたい」予測でCXを革新

2025年11月13日 10時23分更新


 NTTとNTTドコモは、顧客一人ひとりの行動データをもとに意図を予測し、最適な提案を実現するAI技術「大規模行動モデル(LAM:Large Action Model)」を共同開発した。オンラインや店舗など複数の顧客接点から得られるデータを時系列で統合し、顧客の「どうしたい」を予測して販促施策を自動最適化する。この1to1マーケティングの高度化により、テレマーケティングの受注率は従来比で最大2倍に向上。顧客体験(CX)と業務効率の両面で成果を上げた。

これまでのマーケティングは、年齢や性別などの属性ごとに顧客を分類する「セグメント型」が中心だったが、顧客ごとに最適な対応を行う「1to1マーケティング」が求められている。ドコモは多様な顧客接点データを「4W1H(誰が/いつ/どこで/何を/どうした)」形式に整理できるCX分析基盤を整備し、NTTが開発した行動予測AI「LAM」と連携。顧客行動の順序やパターンを学習することで、提案内容・方法・タイミングを個別最適化できる仕組みを構築した。

LAMは大規模言語モデル(LLM)に類似したTransformer構造を採用した生成AIで、数値やカテゴリーデータを扱う点が特徴。顧客行動の前後関係を学習し、異なる行動順序の意味を理解できる。たとえば「電話案内→商品閲覧→購入」と「閲覧→電話案内→購入」では、同じ3ステップでも意図が異なるが、LAMはこうした文脈を把握し、次の行動を高精度に予測する。

開発にあたっては、GPUサーバー(NVIDIA A100×8基)で145GPU時間という低コストで学習を完了。一般的な大規模AIの学習に比べ約568分の1の計算コストに抑え、現場業務に導入しやすい構成を実現した。ドコモではこの技術をテレマーケティングに適用し、顧客の提案必要度をスコア化。購買意欲が高い層を優先的に案内することで、成約率と応対効率の両方を改善した。

実際の検証では、店舗に来店できない顧客や契約変更を検討中の顧客に、最適なタイミングで提案できた事例も報告されている。これにより、顧客接点の満足度を高めつつ、営業リソースの有効活用にもつながった。AIによる1to1マーケティングは、CX改善と業務効率化を同時に実現する新たなアプローチといえる。

マーケティングへの適用

NTTは今後、医療やエネルギーなど他分野へのLAM展開を進める方針で、ドコモはCX分析基盤と連携しながら、顧客体験のさらなる個別最適化を推進する。AIが顧客の意図を理解し、企業の対応を自動最適化する流れは、マーケティングの在り方を大きく変える可能性を秘めている。

NTTリリース:https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/11/12/251112a.html

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