第23回『このミステリーがすごい!』大賞、受賞作決定

2024年10月3日 10時30分更新


 株式会社宝島社が主催する第23回『このミステリーがすごい!』受賞作が2024年10月1日に発表された。応募総数403作品の中から、26歳の現役漫画家である土屋うさぎ氏の『謎の香りはパン屋から』が大賞を受賞した。

さらに、文庫グランプリでは松下龍之介氏の『一次元の挿し木』と、香坂鮪氏の『どうせそろそろ死ぬんだし』が選ばれた。

大賞は、土屋うさぎ『謎の香りはパン屋から(仮)』

謎はクロワッサンのように折り重なり、カレーパンのように刺激的!
パン屋さんでの<日常の謎>を解く“美味しい”ミステリー

【あらすじ】
大学一年生の市倉小春は漫画家を目指しつつ、大阪府豊中市にあるパン屋〈ノスティモ〉でバイトをしていた。あるとき同じパン屋で働いている親友の由貴子に、一緒に行くはずだったライブビューイングをドタキャンされてしまう。誘ってきたのは彼女のほうなのにどうして? 疑問に思った小春は、彼女の行動を振り返り、意外な真相に辿りつく…。パン屋を舞台とした〈日常の謎〉連作ミステリー!

【選評】
生き生きした会話とテンポのいいストーリーテリング、なにより全体を包む空気感が魅力的。(大森望/翻訳家・書評家)
完成度の高い人間関係劇とおいしそうなパンの魅力で読ませる。(香山二三郎/コラムニスト)
パン屋ならではの事件を盛り込みつつ、パンを謎と絡ませるなど、読者のもてなし方を分かっている。(瀧井朝世/ライター)

大賞の賞金は1,200万円で、書籍化は2025年1月を予定している。

文庫グランプリ

松下龍之介『一次元の挿し木(仮)』
【あらすじ】
ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨と、四年前に失踪した妹・紫陽のDNAが完全に一致した。大学院で遺伝人類学を専攻する兄の悠はエラーを疑い再鑑定するも一致し、教授に相談しようとした矢先、教授が何者かに惨殺された。殺された教授の姪・唯から重度の昏睡状態にある彼の娘・真理が行方不明だと知らされた悠は、唯と協力して真理と紫陽の行方を探るうちに、人類史を揺るがす陰謀に足を踏み入れてしまう—-。

【選評】
冒頭で提示される謎の牽引力、ストーリーの面白さでは、今回これがダントツ。(大森望/翻訳家・書評家)
ヒマラヤの呪われた湖で発掘されたという二百年前の古人骨のDNA鑑定が暴く驚くべき真相!(香山二三郎/コラムニスト)
二百年前の骨と失踪した少女のDNAが一致したという謎が魅力的!(瀧井朝世/ライター)

香坂鮪『どうせそろそろ死ぬんだし(仮)』
【あらすじ】
探偵業を営む元刑事の七隈。七隈は助手の律と共に、主催者・茶山が所有する山奥の別荘“夜鳴荘”に招待を受ける。泊まりがけで開催される、余命宣告された人々が集う交流会のゲストとして、自身の探偵談を披露するためだ。会の個性豊かなメンバーと交流を深める二人。しかし二日目の朝、参加者の一人が不審な死を遂げ……。もうすぐ死ぬ人間がなぜ殺されたのか? 全く新しい“館”ものミステリー、開幕!

【選評】
もうすぐ死ぬ人間をなぜ殺すのか? 余命宣告された人々が集まる別荘という舞台が素晴らしい。(大森望/翻訳家・書評家)
特異な設定で惹きつけられるし、探偵の交代趣向やヒネリ技にも力量を感じた。(香山二三郎/コラムニスト)
ユニークな設定がまず興味を引いたし、二度読みしたくなる仕掛けが上手かった。(瀧井朝世/ライター)

文庫グランプリの両作品は、それぞれ100万円の賞金を受け取り、2025年1月以降に順次刊行される予定。

詳細はこちら
https://konomys.jp/information

関連カテゴリー