株式会社 ICT総研 (東京都中央区)は11月13日、「2020年 定額制音楽配信サービス利用動向に関する調査」の概要をまとめた。
■ 定額制音楽配信サービス利用者数は2020年末に2,390万人、2023年末に2,930万人へ
日本レコード協会の統計によれば2019年の日本の音楽コンテンツ市場は、CDなどのオーディオレコード市場が1,528億円で前年比3%の減少であったのに対し、音楽配信市場は706億円で前年比10%増となった。音楽配信の市場規模は年々拡大しており、パッケージ型のオーディオレコードの減少を補完している。
ICT総研では、音楽サービスの主流となりつつある定額制音楽配信サービスの市場動向について調査を行い、現在の市場規模を推計した。ICT総研の需要予測では、2019年末時点で日本国内の音楽配信サービスの利用者数は約2,160万人と推計される。
2,160万人の利用者のうち毎月一定額の料金が発生する有料サービス利用者数は1,140万人、無料のお試しサービスなどを利用中の無料サービス利用者数は1,020万人となる。また、2020年末の時点では有料サービス1,310万人、無料サービス1,080万人で2,390万人に達する見込みだ。さらに2021年末には有料・無料サービス合計で2,590万人、2022年末に2,770万人、2023年末には2,930万人に拡大すると予測される。
■ 定額制音楽配信サービスの有料サービス利用率は19.2%、無料サービス利用率は13.3%
ICT総研が2020年10月に実施したWebアンケート調査の結果では、定額制音楽配信有料サービス利用者は848人(19.2%)、無料サービス利用者は586人(13.3%)であった。Webアンケートを実施した4,409人のうち32.5%にあたる1,434人が有料または無料の定額制音楽配信サービスを利用していることがわかる。2019年5月に実施した前回の調査と比較して有料サービスで4.8%、無料サービスで0.7%利用率が向上する結果となった。有料サービスの利用率は年々増加傾向で成長率が高く、無料サービス利用率は伸び率の鈍化が見られる。
定額制音楽配信サービスのうち有料サービスでは20代~30代の利用率が最も高く、無料サービスでは10代~20代の利用率が高い傾向が見られる。総じて年齢層が高くなるほど音楽配信サービスの利用率は低下する傾向が見られ、現時点では10代〜30代が音楽配信サービス市場を支えていると言えそうだ。
■ 利用者数トップはPrime Music、2位はSpotify、 3位 Apple Music、4位 LINE MUSICと続く
アンケート調査の結果では、Prime Music(Amazon)の利用者が最も多く569人だった。2位はSpotify で409人、3位はApple Musicで383人、4位はLINE MUSICで267人となった。さらにAmazon Music Unlimitedが 253人、Google Play /You Tube Musicが161人、AWA 96人、dヒッツ 86人 うたパス75人、RecMusic(レコチョクBest) 72人、KKBOX 59人と続く。前回の調査では4位だったSpotifyが2位に上がり、Apple Musicが3位に後退した。
Prime Musicは、月額500円(年間契約4,900円)のAmazon Prime会員であれば利用できる音楽配信サービスで200万曲をラインナップしており、同時にプライムビデオのサービスも利用できる。価格が安いことから人気を集めており利用者数トップとなった。Amazonには、この他に7,000万曲以上が聴き放題となるAmazon Music Unlimitedもあり、両サービスを合わせたシェアは他を圧倒している。
前回の調査と比較すると各サービスの利用率は上がっているが、中でも最も利用者数が増えたのがSpotifyで、昨年の利用率5.3%から今年は9.3%へと4%増加している。この他では、Prime Musicが2.4%増、Apple Musicが1.5%増、Amazon Music Unlimited が1.0%増、LINE MUSICが0.7%増となった。その他のサービスの利用率は前年並みかマイナスとなっているものが多く、シェア上位のサービスに利用者が集中する傾向が見られる。
■ 顧客満足度トップ3は、Apple Music、AWA、KKBOX
Webアンケートの顧客満足度調査結果では、Apple Musicが81.1ポイントで1位、AWAが78.4ポイントで2位、KKBOXが77.9ポイントで3位につけている。さらにうたパス、Amazon Music Unlimited、Spotify、dヒッツが77ポイント台で近接している。Prime Musicは利用率1位だが、視聴できる楽曲が200万曲程度しかないため満足度は高くなくランキング圏外となっている。
■ 音楽配信サービスの利用端末はスマートフォンが最多、自宅ではパソコンやタブレットを利用
アンケート結果によると、定額制音楽配信サービスを利用する端末はスマートフォンが最も多く483人、次いでノートパソコン168人、タブレット端末142人、デスクトップパソコン136人という回答だった。スマートスピーカーでの利用者は96人でまだ本格普及には至っていないようだ。かつて一斉を風靡したiPodなどの携帯型音楽プレーヤーの利用者は48人と少なくなっている。
スマートフォンは常にユーザーの手元にあるため音楽との親和性が高く、今後も定額制音楽配信サービスが普及していくことは間違いない。また今年からモバイル5Gサービスが開始されたことで高速データ通信が利用しやすくなり、より高品質なハイレゾ音源の音楽配信サービスが増えていくだろう。Amazon Music HDやmora qualitas(ソニー)のようなハイレゾ音楽配信を利用したいというユーザーの比率は6割に達しており、今後はこの分野へのサービス参入も増加する見込みだ。