ソフトバンク、上期過去最高益を更新。AI・金融が牽引

2025年11月6日 11時23分更新


 ソフトバンク株式会社の2026年3月期第2四半期(上期、2025年4〜9月)の連結売上高は3兆4,008億円で前年同期比7.9%増、営業利益は6,289億円で同7.3%増となり、いずれも過去最高を更新した。純利益は3,488億円と7.7%増。
法人向けICTやAI関連製品、PayPayを中心とする決済事業の好調が利益拡大を支え、通期計画(営業利益1兆円)に対する進捗率は63%と順調に推移した。上期はディストリビューション事業とファイナンス事業が成長を牽引し、全セグメントで増益を確保した。

【セグメント別概要】
コンシューマ事業
売上高は1兆4,757億円(3.4%増)、営業利益は3,309億円(2.7%増)と増収増益。モバイルサービスは通信料のARPUが安定基調にある中、「ワイモバイル」ブランドを中心としたスマートフォン契約数が増加し、モバイル売上が増加した。また、短期契約は獲得効率として非効率だったことを踏まえ、今後はブロードバンド・でんき・カードなどセット利用での長期契約者に注力する。

エンタープライズ事業
売上高は4,820億円(8.1%増)、営業利益は1,041億円(10.2%増)で増収増益。企業のデジタル化需要を背景に、クラウドやセキュリティソリューションが堅調で過去最高益を更新した。

ディストリビューション事業
売上高は5,058億円(17.4%増)、営業利益は220億円(35.5%増)で過去最高を記録した。要因としては、特にAI関連商材のマーケット拡大したことにある。また、これまでの売り切り型から、クラウドやSaaSといったサブスクリプションモデルへの転換を進めており、継続収入盤の拡大が期待される。2025年度中には売上1兆円超が見込まれる。

エンタープライズ事業とディストリビューション事業と合わせた法人向けの合計売上は、今年度に2兆円に達する見込みで、次期の中期経営計画ではコンシューマ事業(約3兆円)に匹敵するサイズへの成長を目指す。

メディア・EC事業
LINEヤフーグループを中心に売上高は8,228億円(4.2%増)、営業利益は1,675億円(13%増)。コマース領域がアスクルグループやZOZOグループの取扱高増加により、売上を牽引した。なお、当期よりPayPay銀行がファイナンス事業に移管されたため、前年同期の数値を遡及修正している。

ファイナンス事業
PayPayグループが業績を牽引。売上高は1,897億円(24.3%増)、営業利益は385億円(116.2%増)と倍増。特に、PayPayの連結決済取扱高(GMV)は9.2兆円と前年同期比25%増に達し、非通信領域の収益を大きく押し上げた。

【次世代インフラ戦略】
ソフトバンクは、長期ビジョンである「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」の実現に向け、AIとクラウドを中心とした取り組みを強化している。

まず、2025年10月8日に発表したオラクルとの共同開発によるソブリンクラウドサービス「Cloud PF Type A」を、2026年4月に提供開始する予定だ。政府・自治体・企業のデータ主権に配慮した安全性の高いクラウド基盤として、国内のクラウド需要拡大を支える。

さらに、同日に発表された国産LLM「Sarashina mini」のAPIサービスを同年11月28日から法人向けに提供し、文章生成や業務効率化など企業のAI活用を後押しする。併せて、社内で培ったAIデータセンターのGPUサーバーを外販化し、急増するAI開発需要に対応する。

加えて、ソフトバンクグループとOpenAIによる合弁会社「SB OAI Japan」を2025年11月5日に設立。OpenAIのエンタープライズ向け最新技術とソフトバンクの運用支援力を組み合わせたAIソリューション「クリスタル・インテリジェンス」を2026年に国内で独占展開する。同社は、AIによる業務変革支援を通じて企業の生産性と経営効率の最大化を目指し、ソフトバンク自身も先行導入企業として実証を進める。これらの施策により、同社は通信を超えた社会基盤企業としてAI時代の新たな価値創出を推進していく方針だ。

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