ソフトバンク2017年3月期第1四半期決算、ソフトバンクモバイル実態見えにくいという指摘も
2016年8月1日 18時51分更新
ソフトバンクグループは7月28日、2016年度第1四半期(4~6月)の決算を発表した。売上高は前年同期比2.9%増となる2兆1265億2100万円、営業利益は同0.2%増となる3192億3600万円、純利益は同19.1%増となる2541億5700万円であった。
Sprint事業の売上高は減少したものの、国内通信事業、ヤフー事業、流通事業において売上高が増加した。事業ごとの売上高を見ていくと、国内通信事業の売上高(外部顧客への売上高)は、前年同期から 40,176 百万円(5.6%)増加し、754,662 百万円となった。通信サービス売上と物販等売上がいずれも増加した。
Sprint事業の売上高(外部顧客への売上高)は、前年同期から 89,715 百万円(9.6%)減少し、848,098 百万円となった。米ドルベースの売上高は前年同期から 15 百万米ドル(0.2%)減少したが、第1四半期における対米ドルの為替換算レートが前年同期よりも円高になったことにより円ベースの減少幅が拡大。
ヤフー事業の売上高(外部顧客への売上高)は、前年同期から 92,861 百万円(85.6%)増加し、201,392 百万円となった。これは主に、2015 年8月にヤフーがアスクルを子会社化したことによるものである。
そして、流通事業の売上高(外部顧客への売上高)は、前年同期から 15,968 百万円(5.6%)増加し、300,148 百万円となった。
ソフトバンクグループが7月18日に発表した半導体開発メーカーARM買収の金額(約3.3兆円)が高すぎるのではないかという話題に対して、孫社長は自身の見解を述べた。
まず同氏が語ったのが、EBITDAの倍率、純有利子負債がEBITDAに対して何倍なのかということである。同社がボーダフォン日本法人を買収した直後のEBITDAの倍率は6.2倍であり、少し無理をした倍率の借り入れを行ったという。そして、今回3.8倍だったものがARM買収で4.4倍に増加した。しかし、孫氏は、「十分健全な範囲。中長期的には3.5倍くらいまで下げていくのがよりよいのかなと思っているが、これは時間の問題で、3.5倍くらいにはいけると思っている」と語った。
続いて、もう1つ述べたのが、純有利子負債に対して売れる資産をいくら持っているかという見方。ソフトバンクは、売れる資産、売ったとしても本業に差し障りのない資産を約9兆円持っており、純負債との差額を考えると2兆円余っているため「実質無借金である」と持論を展開。年間5,000億のフリーキャッシュフローが毎年入ってくる状態でもあり、「今までの大きなパラダイムシフトのときの賭けに比べて、今回はまったくフルスイングしたつもりがない」と語り、買収額の大きさには心配した様子を見せなかった。
苦戦が続いているように思われるSprintについては、ポストペイド携帯電話の純増数が、2年前のマイナス62万からプラス17万まで改善し、過去5年で初のMNP純増。解約率は、2年前の2.02%から1.39%となり、Sprint史上で最小限のレベルまで減少している。
その結果、調整後EBITDAが前年同期比18%増の25億ドル、調整後フリーキャッシュフローが1年前のマイナス22億ドルから5億ドルのプラスとなったことに、孫社長は「(Sprintは)これからキャッシュフローを稼ぐ、稼ぎ頭の1つになっていくというふうに転換できるメドがついた」と自信を見せた上で、「私は今非常にSprintを買ってよかった、売りたくないと思っている。今やSprintの電話会議、ネットワーク設計が楽しくてしょうがない」と笑顔で語った。
ARM社買収のシナジーが見えないという質問に対して、孫社長は「だからいいんです」と切り出した。シナジーが見えすぎると2つの問題があるという。ひとつめが、シナジーが見える会社の独禁法上の問題、ふたつめが、取締役会の問題。シナジーが見えないからこそ、その問題が表に出ず、無風状態で買いに行けるのだ、と。
そして、今回の買収劇を囲碁とボクサーの打つ手に例え、「ポーンと離れたところに打った石が、一手目、二手目、三手目では、繋がりがよく見えない。ほとんどの人には見えないが、そのつながりを説明するつもりはない。我々はリングに立つボクサーみたいなもので、相手とリングの上で戦うのに、打つ手なんていうのは絶対言わない。勝つことが大事なわけで、勝つプロセスを説明することが大事なのではない」と述べた。
そして、ARM買収によるSprintのチーフネットワークオフィサーとの兼務について問われると、今までSprintに50%の時間を充てていたものを今後はSprintとARMに45%ずつ充て、残りの10%をその他の事業に充てると説明。国内通信事業において、Y!mobileの話題は聞くがソフトバンクモバイルの実態が見えにくくなっているという指摘に対して、「基本的にY!mobileはソフトバンクグループの100%子会社で完全にひとつのグループ」と回答、ソフトバンクグループ代表取締役副社長の宮内氏が、「ブランドとしてソフトバンクモバイルとY!mobileがある。もうY!mobileという会社は存在しない」と訂正する場面があった。
孫社長の気持ちは、すでに海外事業がほぼ100%となっており、国内事業への興味はかなり薄れているようである。
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