ソフトバンク最大の法人向けイベント「SoftBank World 2020」初のオンライン開催

2020年12月7日 11時40分更新

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 ソフトバンクグループは10月29〜30日に、ソフトバンク最大の法人向けイベント「SoftBank World 2020」を、初のオンライン形式で開催した。各講演では、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏、ソフトバンク社長の宮内謙氏、副社長で法人事業を統括する今井康之氏、そして、世界のデジタル化を牽引するグローバルIT企業のCEOたちが、最先端のテクノロジーや今の時代を乗り越えるための企業のデジタル化について語った。

〇AIは今後、最もエキサイティングな10年を迎える

 基調講演の冒頭で、ソフトバンクグループ代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏は、「AIが大学や企業の研究室ではなく、さまざまな事業そのものに活用される時代になった。クラウド側で大変な発展を遂げたAIは、これからはエッジサイドのAIと相互にやりとりをしながら、さらにインテリジェンスを高めていく」と、世界で最も普及しているエッジコンピューティングのプラットフォームを提供している会社であるアームと、クラウド側のAIのNVIDIAについて触れ、「AIは新しい、最もエキサイティングな次の10年を迎えるタイミングに来た。ぜひ皆さんも大いに活用していただきたい」と語った。そして、AIコンピューティングの第一人者であるNVIDIAの創業者/CEOであるジェンスン・フアン氏と約1時間にわたり、対談が行われた。

 今回の対談は、NVIDIAがソフトバンクグループおよびソフトバンク・ビジョン・ファンドの傘下だったアームを400億⽶ドル(約4兆2000億円)で買収したことを踏まえたものと考えられる。なお、同買収にあわせて、ソフトバンクグループはNVIDIAの筆頭株主になった。
 フアンCEOは「AIこそが現代のもっともパワフルなテクノロジーであるともっと多くの人々に認識してもらいたい。歴史上初めてコンピューター自身が、ソフトウエアがソフトウエアのコードを書けるようになったのです」と語り、現代に残る、未だ解決方法がわからない多くの問題に対処するために「私たちは史上初めて人間には書けないようなソフトウエアを書ける極めてパワフルなコンピューターを構築できる」と、NVIDIAが新しいソフトウエア開発において、ソフトウエア技術者とソフトウエア自身が共同開発を行うというコンピューターサイエンスのまったく新しい手法に取り組んでいることを語った。

 孫氏はこれに応え、コンピューター自身がコーディングを行い、人間の思考を現実化できるようになることで「人間は膨大な時間を節約でき、創造的な活動に集中できる」と話し、NVIDIAが世界中の技術者の協力を得て開発を進めるコンピューティングプラットフォームに対して、「コンピューターのアーキテクチャーは変わっていく。このコンセプトの大転換に人々は気づくべき」と期待を寄せ、フアン氏と孫氏は、拡張した知能として用いられるための深層学習の真っ只中にあるAIの重要性とビジョンについて語り合った。

 基調講演の後半で孫氏は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先の中から、創薬、医療、教育、自動運転、Eコマースなど、さまざまな分野でAIを活用している企業の事例を紹介し、「AIは人々にもっと快適で豊かなものをもたらしてくれるとポジティブにとらえている。このエキサイティングな時代に生まれたことを幸せだと思い、この革命に貢献をしていきたい」と述べ、日本のビジネスパーソンに向けて「一緒にがんばっていきましょう」と呼びかけ、基調講演を締めくくった。

〇Meet the Global Tech Leaders デジタル化の先にある未来

 孫氏に続いて、代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙が登壇し、ソフトバンクがビジネスパートナーシップを結んでいる、世界のIT大手6社のCEOとの特別プログラム「Meet the Global Tech Leaders」をスタート。

 宮内氏は冒頭に、新型コロナウイルスによって我々は大きなネガティブなインパクトを受けたが、それによってむしろ「デジタルコミュニケーション」「デジタルオートメーション」「デジタルマーケティング」という、3つの革命が一気に加速しようとしていると語った。

 6人のCEOが映像で紹介されると、「今回この面々が集結したのは、SoftBank World 2020を新しいオンラインのスタイルに変えたからこそできたことかもしれません。まさにデジタルシフトの典型であるといってもいいのではないか」としてプログラムを始めた。

 世界のIT大手6社のCEOからはそれぞれ、自社のビジョンとミッション、現在あるいは将来に向けて最も注力していること、そしてパンデミックによってもたらされた課題の解決と企業のデジタルシフトの実現に応える最新のソリューションが語られた。

 宮内氏は、5Gサービスの今後の展開を見据え、「先端技術の塊ともいえる5Gネットワークを提供するソフトバンクは、そのアプリケーション、ミドルウエアとして、この6社と強固なパートナーシップを継続し、日本のデジタルトランスフォーメーションを推進していきたい」と、熱いメッセージで締めくくった。

 続いて行われた基調講演で宮内氏は、デジタル化に適応した企業がこの時代を生き残ると訴え、10年以上前から働き方のデジタルシフトを推進しているソフトバンクの取り組みや、コロナ下での営業、ショップ、コールセンター、技術部門での事例を紹介。
 法人営業に関しては、「社員の8割がリモートワークを行う中で、ウェビナーを使ったイベント集客数が昨年の同時期と比較して6倍にアップし、顧客へのコンタクト数が5倍になった」と、デジタルシフトによる成果を例示した。
 また、5Gがもたらす変化の事例として、中継設備を介さずにリアルタイムな映像配信が可能になるBaaS(Broadcast as a Service)のデモンストレーション動画を紹介し、「5Gによる技術革新は産業構造を変化させ大きなコストダウンをもたらす」と強調した。「ソフトバンクはデジタルシフトを自ら体験し、AIも既にさまざまな部門で使っている。あらゆる環境下でのデジタルシフトを皆さんに提供するのが我々の一番大事な使命だと思っている。我々の体験を皆さんにいち早くお届けしたいというのが私のメッセージです」と基調講演を締めくくった。

〇ソフトバンクのグループ企業CEOが語る、データとテクノロジーによって変革する社会
 ソフトバンクのグループ企業のCEOが一堂に会し、日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員の大和田尚孝氏をファシリテーターとしてパネルディスカッションが行われた。

 「新型コロナでの働き方の変化」「データの活用」「日本の未来にソフトバンクグループ各社が貢献できること」の質問に対して、ヤフーが「無制限リモートワークに完全移行した」ことや、PayPayでは「オフィスはワイワイガヤガヤやるところ」としてオフィスの在り方が再定義されたこと、また、デジタルシフトによる思いがけない営業効果や、コロナでの日々のデータをとらえて新サービスを開始した例など、実際の取り組み事例が紹介された。

 パネルディスカッションの最後に宮内氏は、「日本は今がデジタルシフトを一気に進められるチャンスであり、AI、5Gの世界で日本の高品質な産業がデジタルシフトを果たし、DXを計画的に行うことは日本の未来につながっていく。ソフトバンクのソリューションを結集してDXの継続に貢献していきたい」と語った。

〇ソフトバンクが企業や地域社会との「共創」によって実践しているDX
 2日目の基調講演は代表取締役 副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏が登壇し、ソフトバンクが企業や地域社会との「共創」によって実践しているDXの事例を紹介。

 今井氏は、困難を乗り越える鍵がデジタルトランスフォーメーション(DX)であると述べ、具体的にソフトバンクが取り組んでいる物流、製造、街のDXの事例を紹介した。

 製造業の事例では、工場内での検品業務を映像と5Gの通信を使って自動化する試みを例にあげ、「キーとなるテクノロジーは、5Gとエッジコンピューティングで、これによって工場内の流れを遅延なく劇的に改善することができる」と説明し、さらに、前日に行われた孫氏とNVIDIAのフアンCEOとの対談内容に触れ、「エッジデバイスでAI処理を行う時代がこれから訪れようとしている。そんな仕掛けが将来の製造業の中では主流になっていくだろう。これをソフトバンクはトータルで提供していきたい」と意欲を示した。

 続いて街のDXとして、国家戦略特別区域計画の特定事業として開発され、ソフトバンク本社が入居する「東京ポートシティ竹芝」のオフィスタワーのIoTとAIの活用例を動画で紹介。「都市開発というのは、竣工した翌日から陳腐化が始まるものだが、竹芝にはソフトウエア、テクノロジーを次々と導入していき、いつ行っても最新のテクノロジーが整っている、そんな街にしていきたい」と意気込みを語った。

 最後に今井氏は、DXを実現するには、「コミュニケーション基盤」「デジタルオートメーション基盤」「デジタルマーケティング基盤」「セキュリティー基盤」の4つの基盤が必要であるとし、「未来に向けたDXにはこれにAIのパワーが加わっていく。これらをソフトバンクは提供し、日本発のDXモデルを世界に提供していきたい」と熱く語り講演を締めくくった。

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