プロ野球12球団の「ファン満足度ランキング」、1位は広島カープ―日経クロストレンド
2018年10月1日 12時30分更新
日経トレンディ記事から再構成した日経クロストレンドのサイトで、プロ野球12球団「ファン満足度ランキング」総力分析し、結果を発表した。以前に比べ球団によるファンサービスは劇的に向上。次第にファンの足が再び球場に向くようになり、圧倒的な観客動員数として花開いてきた。
ナイターの地上波中継は激減したプロ野球。だが実は、その人気はピークに達している。10年前に比べ、1試合の平均観客動員数はセ・パ両リーグとも15%以上も増加。球場は最高潮の盛り上がりを見せている。では、ファンサービスが本当に優れる球団はどこなのか。
では、ファンサービスが本当に優れている球団はどこか。慶應義塾大学理工学部の鈴木秀男教授が03年から調査している、「プロ野球のサービスの満足度調査」に注目。これは、年1回以上球場を訪れたファンにWeb上で約25項目のアンケートを取り、満足度を数値化して比較したもの。チームの強さも加味しつつ、各球団のファンサービス自体に対する満足度にフォーカスしている。下記のランキングは、18年1月に調査した最新版。
「ビジネスNo.1球団」に輝いたのは広島。2位にはソフトバンクと優勝争いの常連が並んだ。3位はBクラスの常連ながら、昨年日本シリーズに進出する躍進を見せたDeNA。「球団が本当に強くなるためには、選手編成などのチームオペレーションと同じくらい、ファン獲得のためのビジネスオペレーションが巧みでなければならない」(鈴木氏)という長年の分析が、鮮明に表れた結果になった。
上位チームの施策を見ると、球界の最新トレンドが分かる。広島はリーグ3連覇へ首位をひた走るチームの強さもさることながら、09年オープンのマツダ スタジアムが原動力に。バーベキューをしながら、食べ歩きながらと、あらゆる観戦スタイルの提案が新鮮な楽しみを与え、昨年まで4年連続で年間最多観客動員数を更新している。
こうした野球観戦以外の楽しみ方を提案する米MLB式の球場は、「ボールパーク」と呼ばれる。マツダ スタジアムの成功で、「球場のボールパーク化」は昨今のプロ野球人気を語るうえで欠かせないキーワードに。今や観客動員数アップの絶対条件になっている。
「ボールパーク」
バーベキューをしながら観戦できる席や、通路(コンコース)の多彩な飲食店など、野球観戦以外でも楽しめるよう工夫された球場のこと。米MLBでは主流。
2位のソフトバンクは、ここ4年間12球団で唯一3位以上をキープし、安定して高い満足度を誇っている。新席の設置にも積極的に取り組み、ボールパーク化を推進している。実は、早くから積極的なファンサービスを展開する球界のパイオニア的存在でもある。恒例イベント「鷹の祭典」を初開催したのは04年。05年から14年まで取締役を務めた江戸川大学社会学部の小林至教授は、「ユニホームの無料配布が奏功し、当時発売したチケットは瞬間蒸発した」と語る。この成功が各球団に波及し、ユニホーム配布特典を用意したり、限定イベントを行う“イベントデー”が定番化した。
昨今のプロ野球人気躍進を代表する存在のDeNAは、15年度の11位から僅か2年で3位にジャンプアップ。親会社がDeNAに代わった11年以降、球場でのファンサービスを急速に充実させ、閑古鳥が鳴いていた横浜スタジアムの景色を一変させた。こうしたサービスの実現を可能にしたのが、16年の横浜スタジアム買収。「素早く、自由に球場を改修するため、球場の収益を球団の利益に直結させるためには、球場経営を球団と一体化させることが不可欠」(平田氏)。
この一体経営の実現で、次なる成長株になりそうなのが日本ハム。札幌ドームでは一体経営を実現できない現状を打破すべく、23年に向けた新球場開業計画を発表。移転先の広大な公園全体をボールパーク化する斬新な構想を描いている。
阪神は4位に食い込んでいるが、双璧で12球団断トツの集客力を誇る巨人が10位に甘んじているのはなぜか。鈴木氏の調査を読み解くと、ファンがチームに期待することの球団による違いが影響していることが分かる。
鈴木氏によれば、地域に密着した球団に親しみを覚えるタイプ、プレーの面白さに魅力を感じるタイプ、そしてチームの強さに魅力を感じるタイプの3つに分けられるという。巨人は3つ目の、チームの強さに魅力を感じるファンが極端に多い。「巨人ファンは優勝しないと満足しない」(鈴木氏)。チームの成績が低迷するここ数年はファン満足度も厳しい状態が続いている。似た傾向がある西武は、21年に向けた大規模な球場改修に着手し、地域密着型を目指す。
最近ではZOZO(現在はスタートトゥデイ)の前澤友作社長が球団買収に色気を見せ、臆測を呼んだ。「DeNAや楽天は、IT業界出身の経営者がトップに就き、最新のビジネスモデルを取り入れたことで急激に成長した。ZOZOも同じ役割を担う可能性はある」(平田氏)。「今後の状況次第では、ZOZOによる球団買収の可能性は十分あり、内心期待している」と、ある球団関係者は言う。話題渦巻く球界から目が離せない。
【調査概要】
「プロ野球のサービスの満足度調査」とは09年から、応援するチームの本拠地で年1回以上観戦した人に、Webでアンケート調査を実施。「球場」「ファンサービス・地域貢献」といった観点で質問事項を用意し、各項目10段階で回答された満足度をランキング化している。
観客動員率は18年シーズン、8月12日時点のもので編集部調べ。入場者数は日本野球機構公式ウェブサイト、各球場の収容人数は球場公式ウェブサイトなどを参照。本拠地以外の主催試合も含め、開催球場ごとの収容人数の違いを反映して算出した。その他、各球団の情報は独自アンケートの回答を基に構成。中日、ヤクルトの情報は、球団公式ウェブサイトから編集部調べ
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