doda、職種ごとのコロナ前後「決定年収上昇率ランキング」を発表

2022年4月5日 15時23分更新


パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda(デューダ)」は、「決定年収上昇率ランキング(職種版)」を発表した。本ランキングは、2019年1月~12月末と2021年1月~12月末までの間に「doda」経由で転職に成功した20~65歳の男女の、転職決定企業での決定年収※をもとに算出したものだ。
※決定年収とは、転職を受入れる企業が採用決定時に個人に提示する年収のことを示す。

【調査サマリー】
◆【職種大分類別】コロナ前後での決定年収上昇率ランキング(2019年と2021年比較)(p1.2.3)
・職種大分類11のうち8つで、コロナ前より決定年収がアップ。全体では約3%の上昇。
・「クリエイター×マーケティング」など、かけ合わせのスキルを持つ人材ほど価値が高まる傾向。
・上昇率1位は「クリエイティブ系」で約7%上昇。Webサービスのニーズの高まりや
年収の適正化が背景に。
・上昇率2位「販売/サービス系」は、SNS運用やマネジメント経験がある人材のニーズ拡大で、
約5%上昇。

◆【職種別】コロナ前後での決定年収上昇率ランキング(2019年と2021年比較)(p4.5.6)
・対象全137職種のうち約7割で決定年収が上昇。10%以上の上昇がみられたのは16職種。
・上昇率1位の「アセットマネジメント(技術系(建築/土木))」は、難易度の高い海外不動  産案件が増加したことを背景に即戦力採用が進み、37.5%アップ。
・2位「営業ー医薬品メーカー」では、美容医療や除菌関連商品の営業強化のため、決定年収が約30%上昇。

◆【職種大分類別】コロナ前後での決定年収上昇率ランキング(2019年と2021年比較)
【表1】 職種大分類別 決定年収の上昇率ランキングTOP5 ※2019年を100とした場合の推移

【表2】 職種大分類別 決定年収の上昇率ランキングTOP6~10 ※2019年を100とした場合の推移

職種大分類11のうち8つで、コロナ前と比較し決定年収が上昇。全体平均では約3%決定年収がアップ。
職種大分類は職種を大きな分類で括ったカテゴリを指す。2021年の決定年収上昇率をみると、11のうち8つの職種大分類で、コロナ前である2019年の決定年収を上回った。(【表1】【表2】)

上昇率ランキング1位は「クリエイティブ系」で、決定年収が約7%上昇。
データ分析スキルやデジタルスキルを身に着けたクリエイターの人材競争激化が背景に。

職種大分類で上昇率1位の「クリエイティブ系」の決定年収は、コロナの影響を受けず、右肩上がりの状況が続いている。その背景には2つの理由が考えられる。
1つめは、求人数の急激な増加で、人材獲得競争が激化。2021年の求人数は2019年比で+140%と伸長している。(【表3】)コロナをきっかけに、あらゆる業界でサービスをWebやアプリに移行する動きが進み、クリエイティブ人材の活躍の場が増えた。その結果、人材競争が起こり、年収を引き上げて採用を行う企業が増えた。
2つめは、クリエイティブ人材の給与レンジが適正化されつつあること。従来、「クリエイティブ系」職種は採用実績やポジション数が少なく、企業ごとに提示する年収にバラつきがあった。しかし、ここ数年でクリエイティブ人材の採用実績は一気に増加。各企業で、職務に対する年収の適性化が行われた。これらを背景に、決定年収が上昇したと推測される。

なお、Webサービスを提供する企業では、年々クリエイティブ人材に求めるレベルが高まっている。これまでは進行管理力がある人材が求められていたが、現在は、加えてデータに基づく戦略的なクリエイティブ設計までできる優秀な人材を確保することで、他社との差別化を図る動きが見られる。今後は、データ分析・活用やデジタルスキルを持つクリエイター人材の決定年収は高まると予想される。

 

2位「販売/サービス系」は、決定年収が約5%上昇。
コロナの打撃を受け、事業の立て直しに繋がるSNS運用やマネジメント経験がある人材の採用を強化。

2位の「販売/サービス系」は、スキルと経験のある人材の採用に注力したため、決定年収が上昇した。コロナ流行以前は慢性的な労働力不足に悩まされていたため、企業は未経験採用を活発に行っていた。しかし、外食・小売・旅行業界がコロナの打撃を受け、2020年以降、「販売/サービス系」の求人数は大きく減少。(【表3】)未経験採用を中断し、即戦力採用へとシフトする傾向が強まった。

また、業績の立て直しが急務になったことで、接客経験に加え、ブランドや店舗の宣伝を行うSNSの運用経験や、店舗運営をするためのマネジメントスキルがある人材を採用する企業が増加した結果、決定年収が上昇したと推測される。

【表3】求人掲載数の変化(2019-2021)※2019年を100とした場合

なお、決定年収が微減した10位「金融系専門職」や、11位「専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)」は、2019年までは即戦力や経験者採用が多い傾向にあった。一方、2021年は投資や資金運用・経営コンサルティングのニーズが高まったことで、人員確保が急務に。即戦力採用だけでは追い付かず、次世代育成を見据え、ポテンシャル採用を行う企業が増えたため、決定年収がやや減少傾向になったと考えられる。

◆【職種別】コロナ前後での決定年収上昇率ランキング(2019年と2021年比較)
続いて、細かな職種に分けた職種別での上昇率ランキングをみると、「技術系(建築/土木)」や「営業系」、「技術系(メディカル/化学/食品)」などの大分類に入る職種で大きな伸びが見られた。(【表4】)

【表4】職種別 決定年収の上昇率ランキングTOP20 ※2019年を100とした場合の推移

対象全137職種のうち約7割で決定年収が上昇。そのうち10%以上の上昇がみられたのは16職種。
対象の全137職種のうち、決定年収が上昇したのは92職種、減少したのは45職種と、約7割の職種で決定年収が増加した。決定年収が上昇したうち金額が10%以上アップしたのは92職種中16職種。上昇率TOP20のうち、「営業系」と「技術系(IT/通信)」が最多で4職種ずつランクインした。

 

上昇率1位の「アセットマネジメント」の決定年収は、37.5%と大幅にアップ。
不動産系投資では海外案件増加に伴い、より複雑な知識が必要になったことが背景に。

1位にランクインした「アセットマネジメント」は、投資家に代わって不動産ファンドで不動産売買や、賃貸借の運用業務を行う。
2019年と比較すると、2021年は国内市場が縮小。インパクト投資を目的に、海外不動産案件の投資に参入する動きが増えている。海外案件は、融資スキームが国内と異なる上、規模が大きく協業する関係者も多いため、そうした複雑な業務に対応できる即戦力が求められる。そのため、企業が求める人材のレベルも上がり、決定年収が上昇したと考えられる。また、結果として転職成功者の中で40代以上の割合も高まったことも、決定年収の上昇に関係していると言えそうだ。

​2位、3位にはメディカル業界に関連した職種がランクイン。コロナ後需要が高まった商品の
営業の採用が活発に。コロナの診断ニーズも受け、開発職も採用を強化。

2位は「営業―医薬品メーカー」で約30%上昇。3位は医療系専門職の「研究」で、約24%上昇した。
「営業―医薬品メーカー」では、医薬品だけでなく、美容医療にかかわる商材や除菌関連商品などを扱う企業で採用が活発化している。こうしたコロナ後に需要が高まった商材の販路拡大のため、営業経験が豊富な人材の採用が多く行われたことが、決定年収の上昇に影響したと考えられる。

「研究」では、コロナ診断キットのニーズ増加が影響し、診断薬の研究に関わる求人が増えた。こうした研究を行うバイオベンチャーや診断薬メーカーなどの事業会社は、研究職を募集する企業の中でも給与水準が高く、2021年は、これら企業の採用決定に占める比率が増えたため、決定年収が大きく上昇したと考えられる。

技術系(IT/通信)にあたる4職種がTOP20にランクイン。
IT人材の確保が進んだことや、事業においてデータ分析が必要不可欠になったことが背景に。

4位は、IT/通信領域でテクニカルサポートやカスタマーサポートを行う「ヘルプデスク」となった。コロナ後のデジタルシフトにより、IT製品の販売やWebサービスの提供が増加したことに比例して、ヘルプデスクのニーズが高まっている。これらのポジションは外注する企業が多いため、アウトソーシング先の企業が人員確保のために、決定年収を引き上げた可能性がある。

社内のITインフラを整備する、8位「ネットワークエンジニア」と15位「運用/監視/保守」は、リモートワークの浸透によりニーズが高まっている。特に、クライアントのデジタル推進のサポートを行うIT業界では、比較的年収が高い大手企業や一次受け企業が、体制強化のため採用活動を活発化。そのため、決定年収が上がったと考えられる。

12位は「データサイエンティスト」。DX化によってあらゆる場面でデータ取得ができるようになり、顧客体験価値の向上やサービスの改善プロセスにおいて、データ解析が必要不可欠になっている。そのため、データ分析を行うデータサイエンティストの市場価値が高まっており、決定年収が引き上がったと考えられる。
特に、コロナ後DX化を大きく進める物流業界では、経験、知見ともにある30、40代の転職決定者の割合が増え、決定年収が大幅に上昇した。

また、上記4職種では、いずれも転職成功者の中で20代が占める割合が2019年に比べて減少したため、相対的に決定年収が上昇したことも要因の一つと言えそうだ。

顧客体験価値向上への注目で、webデザイナーやクリエイティブディレクターがTOP20にランクイン。UXデザインの需要増加で、人材獲得競争が激化したことも影響。

7位には「Webデザイナー」、13位には「アートディレクター/クリエイティブディレクター」がランクインした。顧客体験価値が重要視され始めた2020年ごろからは、「クリエイティブ系」職種の中でも特にこの2職種のニーズが高まっている。

コロナをきっかけに、オンラインでの消費活動がより顕著になった。その状況下で、自社の製品やブランドを選んでもらおうと顧客体験価値の向上を重視する企業が、業界問わず増えている。優れた顧客体験を設計する“UXデザイン” を担う、「Webデザイナー」の需要が高まり、人材獲得競争が起こっていることや、給与水準が高いUXデザインができる人材の転職決定の割合が増えたことで、決定年収が上昇したと言えそうだ。

また、企業のマーケティング活動においてデジタル領域に注力する動きがコロナ後、より加速している。そのため、Web領域にも強い「アートディレクター/クリエイティブディレクター」のニーズも高まった。特に、Web広告や動画制作、またオンラインイベントなどの企画進行を行う広告・インターネット・映像業界などでは、他社優位性を示すために年収を引き上げてでも優秀な人材を獲得する動きが出てきていることで、決定年収が上がったと考えられる。

 ■調査概要
前職の職種大分類・職種を問わず、転職先での職種大分類・職種において提示された決定年収を指数化し、ランキング化。
【対象者】 2019年1月~12月末、2021年1月~12月末までの間に
転職サービス「doda」経由で転職に成功した20~65歳の男女
【雇用形態】正社員

■解説者プロフィール doda編集長 喜多 恭子(きだ きょうこ)
派遣・アウトソーシング事業で法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティング等を経験した後、人材紹介事業へ。法人営業・キャリアアドバイザーのマネジャーとして組織を牽引。その後、派遣事業の事業部長として、機械電子系の派遣サービス立ち上げやフリーランス雇用のマッチング事業立ち上げなどを行う。中途採用領域、派遣領域、アルバイト・パート領域の全事業に携わり、アルバイト求人情報サービス「an」の事業部長を経て、2019年10月、執行役員・転職メディア事業部事業部長に就任。2020年6月、doda編集長就任。

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