ICT総研は2月7日、全国60地点スマートフォン通信速度実測調査の結果をまとめた。2020年3月にMNO (移動体通信事業者) 3社が5Gの商用サービスを開始してから、もうすぐ2年になる。各社の5Gエリアも徐々に拡大しており、ユーザーの利便性は増している状況だ。2020年4月からMNOとしてのサービスを開始した楽天モバイルも含め、MNO各社の通信速度の実態を把握することが今回の調査の目的とのこと。
測定端末は、NTTドコモ、au (KDDI)、ソフトバンク、楽天モバイルのiPhone13。通信速度測定サイト「インターネット速度テスト」(Google)にて、1地点あたり下り(ダウンロード)と上り(アップロード)の速度を3回ずつ測定。測定地点は、全国6都市(札幌市、仙台市、東京23区、大阪市、福岡市、那覇市)の鉄道駅ホーム、鉄道移動中の駅間、公共施設、商業施設など全60地点(各都市10地点ずつ)。
全国60地点の下り通信速度は、ドコモ、au、ソフトバンクの3社が150Mbps超
調査の結果、今回調査対象とした全国60地点の下り通信速度は、auが166.5Mbpsでトップとなり、NTTドコモ (164.8Mbps)、ソフトバンク (153.1Mbps) と続いた。楽天モバイルは33.8Mbpsと、3社から大きく離される結果となった。
楽天モバイルの下り通信速度は、2021年5月に当社が実施した同様の調査「山手線4Gおよび5G通信速度実測調査」における下り通信速度(31.5Mbps)と大きく変わっていない。だが、au、NTTドコモ、ソフトバンクの3社の下り通信速度が高速化したことで、その差は広がる結果となった。コロナ禍であるため、密集状態を避けて測定したことも要因の1つとみられるとのこと。
NTTドコモ、au、ソフトバンクの下り通信速度が最も速い地点は、それぞれ500Mbpsを超えている。調査地点別に見ると、「鉄道移動中の駅間」は他の地点に比べて通信速度が低速になる傾向が見られた。
また、上り通信速度については、ソフトバンク (24.6Mbps) 、au (24.4Mbps)、NTTドコモ (18.7Mbps)、楽天モバイル (18.5Mbps)であった。下り通信速度と異なり、キャリアごとの速度差は非常に小さい。
5G受信地点比率は、auが66.7%でトップ。楽天モバイルは8.3%に留まる
調査対象とした全国60地点のうち、5Gを受信できた地点数の比率は、auが66.7%でトップ。ソフトバンク (51.7%) 、NTTドコモ (48.3%) と続いた。楽天モバイルは8.3%に留まっている。au (KDDI) は、4Gで利用している周波数を5Gに転用する戦略があり、5Gエリアカバーの点で有利であると言われている。これが、今回の調査でもauの5G受信地点比率が高い結果となった要因である可能性があるとのこと。
楽天モバイルの5G受信地点比率は8.3%と3社に比べて低いが、2021年5月の調査時は0.0%であり、これに比べると改善されている。
なお、今回調査対象とした60地点全てで、4キャリア(4ブランド)全てが4Gまたは5Gを受信できている。3Gのみ受信できた地点または圏外だった地点は、1地点もなかったとのことだ。
動画再生までの待機時間は、3社が3.4~3.6秒。楽天モバイルは4.1秒
今回の調査では、当社が作成した2分間のYouTube動画を再生するまでの待機秒数についても調査した。この結果、再生開始ボタンを押してから実際に再生するまでの待機秒数が最も短かったのはソフトバンク (3.4秒) であった。以下、NTTドコモ (3.6秒)、au (3.6秒)、楽天モバイル (4.1秒) となっているが、キャリアごとの大きな差は見られていない。
また、動画再生後に動画が停止した秒数についても測定したが、4キャリア(4ブランド)全てが全地点で、動画が再生中に一度も停止することがなかったとのこと。
下り通信速度の4社平均は129.6Mbps。2011年時と比較して、144倍に
ICT総研では、2011年から定期的に同様の通信速度の測定を続けてきた。2011年に調査した際には、MNO の平均の下り通信速度は0.9Mbpsにすぎなかったが、4Gサービスの開始・普及、5Gサービスの開始を経て、平均速度は顕著に高速化している。今回調査の4社平均の下り通信速度は129.6Mbpsであり、これは2011年時と比べて144倍の速度である。
キャリアの5Gカバーエリアは現在も日々拡大を続けている状況。政府による携帯電話料金の値下げ要請やオンライン専用プランの普及により、ユーザーが支払う料金が安くなってきている一方で、通信品質は維持・向上されているとのことだ。