キーワードは「倫理的」――スマートフォン「FairPhone」

2014年6月5日 10時41分更新


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 スマートフォン製作にはコンゴ民主共和国(DRC)で採れる鉱物が必要だが、それが紛争の資金源や、児童労働の温床になっていることも多い。鉱物の地域的偏在性により、これまでは看過されてきた問題だが、「FairPhone」では倫理的な原料調達をすることにより、その問題をクリアした。主に「ethical(倫理的)」というキーワードに惹かれる顧客により、順調に売上を伸ばしている。

 
 
 フィーチャーフォン(従来型携帯電話)のみならず、スマートフォンの内部基盤には、「金」のような鉱物が使われていることはよく知られている。しかし、それらが紛争地域で採掘されている可能性があることを考えることは少ない。2013年からヨーロッパで販売されているFairPhoneは、その問題を解決するために企画・販売されている、画期的スマートフォンである。

 以前「ブラッド・ダイアモンド」といった映画にもなったように、ダイヤモンドはアフリカの紛争地域で産出され、紛争の資金源になっている鉱物としても有名だが、そのような鉱物はむろんダイヤモンドだけではない。あまりにも武装部隊の資金源になることが多いため、総称して「紛争鉱物(コンフリクト・ミネラル、conflict minerals)」と呼ばれる鉱物には、金、錫、タンタル、タングステン(鉄マンガン重石の形で採掘)の4種がある。現在では主にコンゴ民主共和国(DRC)および周辺国で採掘されている。
 DRCはいわずと知れた紛争地帯であり、1960年に始まったコンゴ動乱以降、現在に至るまで長期にわたって4種の「紛争鉱物」がDRC国内各勢力の争奪対象となっている。その輸出高が彼らの武器資金源となることで紛争が長期化し、さらなる紛争鉱物争奪戦も発生する、以下繰り返し、といったかたちになっている。 加えて、このような鉱物は地球上の特定地域に偏在しており、どこからでも調達可能というわけではないため、メーカー側も武装勢力等の資金源になるという事実を黙認してきた状況であった。

 このような状況を打破しようと、FairPhoneは全材料をフェアトレード(仲介業者を廃し、取引相手に正当な対価もしくは+αを支払う)で調達し、さらにサイト上では採掘・デザインなどの各工程にかかるコストを明確にして、1台のスマートフォンになぜこの値段を払わなければならないのかという、普段はブラックボックスであるところの解答が明確になっている(https://www.fairphone.com/[英語])。
 加えて通常採掘現場では未成年の労働者が長時間働かされ、児童福祉の観点からも問題が指摘されているのであるが、フェアトレードの観点からもそのような業者とも取引していない。Ethical(エシカル、倫理的)というキーワードに反応する層は一定数おり、2013年の時点で25,000台を作ったが売れ行きが非常によかったため、2014年には第2期として35,000台を増産し、すでに10,000台以上が売れているという(https://www.fairphone.com/2014/05/21/our-online-shop-is-open-for-pre-orders/[英語])。

 端末自体の機能も充実しており、OSはAndroid 4.2、4コアCPU、4.3インチのディスプレイ、8メガピクセルのカメラ、16GBのストレージ、デュアルバンドSIM、ユーザーが交換可能なバッテリー、microSDカードスロットを搭載している。注目の紛争鉱物はDRC Conflict Freeといわれる、武器の資金源に関わらない採掘現場から調達した鉱物を使用している。
 ちなみに大手半導体の筆頭メーカーであるIntelも、2014年1月、今年発売の全プロセッサから紛争鉱物を完全排除することを表明している(http://www.intel.com/content/dam/doc/policy/policy-conflict-minerals.pdf[英語])。これからはDRC Conflict Freeの鉱物を使用してゆく予定だという。

 生産者の人権や生産環境などに配慮したEthical(エシカル、倫理的)消費というものが、近年注目されているが、生産者に対し「フェア」であるという触れ込みのスマートフォンがヨーロッパで好評を博していることは、生産工程における、労働者に対する倫理的対応が、顧客の視点からも重要視されつつあることが伺える。

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