利便性の向上に期待するも、やはり不安なのは「情報漏えい」か?!国内クラウド市場 ユーザー利用動向調査
2016年3月3日 12時10分更新
cloudpackが運営する、国内クラウド市場における企業ユーザー動向を定期的に調査・発信していく調査機関 『クラウド総研』は、2015年度調査結果の第2弾として「企業のパブリック・クラウドの利用実態・意識調査」についての調査結果を発表した。
第2弾となる今回の調査では、自社のICT投資額を把握し、ICTに関して決済権を持つ役職である全国1000名の20~60代の男女に対し、「企業のパブリック・クラウドの利用実態・意識」についてインターネットによる調査を実施した。
調査結果の概要は以下の通り。
■企業のパブリック・クラウドの利用実態・意識調査
・2016年1月時点での企業のパブリック・クラウドの利用状況は、既に全社・もしくは一部の事業所などで利用している企業が53.3%に達しており、2014年7月の調査実施時よりも8.1%増加している。「現在はまだ利用していないが、これから利用する予定がある」という企業を加えると、2015年度の調査では全体の71.5%に上る。
・クラウドの導入に期待することについて、全体では「セキュリティの強化」が37.6%で最も高く、次いで「利便性の向上(36.7%)」「運用費用の削減(33.2%)」である。クラウドの導入における不安について、全体では「情報漏えい、セキュリティのリスク」が54.0%で最も高く、次いで「サポート体制は十分か(30.7%)」「運用費用の増加(24.8%)」である。
・クラウド導入時に決め手になった点として、全体では「利便性の向上」が29.1%で最も高く、次いで「運用費用の削減(28.7%)」「セキュリティの強化(27.4%)」である。クラウド導入時に期待することとして上位3位に挙げられていた3つとほぼ同じ結果になった。クラウドの導入を検討した際に障害となった点(デメリットだと思う点)については、「情報漏えい、セキュリティのリスク」が41.7%で最も高く、次いで「運用費用の増加(24.1%)」「サポート体制は十分か(22.8%)」である。
・クラウドサービスを現在利用していると回答した人に「導入によって得られた成果」を聞いたところ、「利便性の向上」が29.1%で最も高く、次いで「運用費用の削減(23.3%)」、「セキュリティの強化(23.3%)」「人件費の削減(19.1%)」となっている。「情報漏えい、セキュリティのリスク」がデメリットとして挙げられていたが、「セキュリティの強化」を多くの企業が達成していることがわかる。
・クラウドサービスを現在利用していると回答した人に「導入時に期待していたが得られなかった成果」を聞いたところ、「人件費の削減」が18.8%で最も高く、次いで「運用費用の削減(17.3%)」「初期費用の削減(13.5%)」となっている。
・クラウドインテグレーターを選ぶ際に重視する点をたずねたところ、全体では、「サポートする技術や知識の幅広さ」が38.1%で最も高く、次いで「知識・ノウハウの豊富さ(34.4%)」「実績(32.2%)」である。
■現在のパブリック・クラウドの利用状況
・業種別にみると、「学術研究・専門・技術サービス業」以外の業界では、過半数が現在利用している・もしくは利用意向がある、を選択している。
・従業員規模別にみると、1~10人の小規模な企業以外では、過半数が現在利用している・もしくは利用意向がある、を選択している。
Q1. 貴社における、現在のパブリック・クラウドの利用状況はどのような状況ですか (SA、n=1,000)
■クラウドに関する意識調査 クラウドへの期待
・クラウドの導入に期待することについて、全体では「セキュリティの強化」が37.6%で最も高く、次いで「利
便性の向上(36.7%)」「運用費用の削減(33.2%)」である。
・全体で上位3 位に挙げられた期待内容について業種別に見てみると、第1 位「セキュリティの強化」について全体より5 ポイント以上期待を高く感じているのは「製造業」「卸売業・小売業」であり、第2 位「利便性の向上」について全体より5 ポイント以上期待を高く感じているのは「建設業」「運輸業・郵便業」、第3位の「運用費用の削減」について全体より5 ポイント以上期待を高く感じているのは「建設業」となった。
・業種別に特色を見ると、「運輸業・郵便業」で「利便性の向上」が全体と比較して10 ポイント以上高く出ていることが判明した。「コア業務への集中、迅速なビジネス機会の確保」は全体の順位は低くなっているが、「金融業・保険業」においては全体より5 ポイント以上期待を高く感じている結果となった。
・従業員規模別に特色を見ると、「51~100 人」では「運用費用の削減」が、全体と比較して10 ポイント以上低く出ていることが判明した。一方、「1,001~2,000 人」では「災害対策、事業継続」が、「2,001~3,000人」では「アウトソーシングの活用」「経営者のシステム部門への理解向上」が、「3,001 人以上」では「運用管理体制の強化」「人件費の削減」「コア業務への集中、迅速なビジネス機会の確保」が全体と比較して10 ポイント以上高く出ている。
Q2. クラウドの導入でどのような事が実現できると期待されていますか。当てはまるものをいくつでも選
んでください。 (MA、n=1,000)
■クラウドに関する意識調査 クラウドへの不安
・クラウドの導入における不安について、全体では、「情報漏えい、セキュリティのリスク」が54.0%で最も高く、次いで「サポート体制は十分か(30.7%)」「運用費用の増加(24.8%)」である。
・全体で上位3 位に挙げられた不安内容について業種別に見てみると、第1 位「情報漏えい、セキュリティのリスク」については「情報通信業」「金融業・保険業」、第2 位「サポート体制は十分か」については「運輸業・郵便業」で全体より5 ポイント以上不安を感じている結果が出た。第3 位「運用費用の増加」については、「不動産業・物品賃貸業」「学術研究・専門・技術サービス業」「複合サービス事業及びサービス業」で5 ポイント以上不安を感じている結果が出たが、「金融業・保険業」では10 ポイント以上低い結果となり、あまり費用を重視していない。
・業種別に特色を見ると、「金融業・保険業」では「初期費用の増加」「運用費用の増加」が、「不動産業・物
品賃貸業」では「障害発生時の切り分けが適切にできるか」が、全体と比較して10 ポイント以上低く出ている。
一方、「建設業」「情報通信業」では「障害発生時の切り分けが適切にできるか」が、「不動産業・物品賃貸業」では「初期費用の増加」「運用費用の増加」が、「学術研究・専門・技術サービス業」では「初期費用の増加」が、「医療・福祉」では「安定運用できるのか(可用性の高さ)」が、全体と比較して10 ポイント以上高く出ている。
・従業員規模数別に特色を見ると、「51~100 人」で「障害発生時の切り分けが適切にできるか」が、「301~500 人」で「安定運用できるのか(可用性の高さ)」が、「2,001~3,000 人」で「初期費用の増加」「運用費用の増加」が全体と比較して10 ポイント以上低く出ていた一方、「1~50 人」で「初期費用の増加」が、「301~500人」で「サポート体制は十分か」が、「501~1,000 人」で「システムの拡張性」が、「2,001~3,000人」で「ライセンス管理の煩雑化」が、全体と比較して10 ポイント以上高く出ている。
Q3. クラウドの導入でどのような事が不安ですか。当てはまるものを選んでください。(MA、n=1,000)
■クラウドに関する意識調査 クラウド導入を検討した(する)際の、決め手となった点(メリットだと思う点)■
・クラウド導入時に決め手になった点として、全体では「利便性の向上」が29.1%で最も高く、次いで「運用費用の削減(28.7%)」「セキュリティの強化(27.4%)」である。クラウド導入時に期待することとして上位3位に挙げられていた3 つとほぼ同じ結果になった。
・全体で上位3 位に挙げられた決め手となった点(メリット)について業種別に見てみると、第1 位に挙げられた「利便性の向上」は、「建設業」「運輸業・郵便業」「学術研究・専門・技術サービス業」で全体と比較して5 ポイント以上高く出ていることが判明した。第2 位「運用費用の削減」については「運輸業・郵便業」「不動産業・物品賃貸業」で全体と比較して10 ポイント以上高く出ていることが判明した。また、第3 位「セキュリティの強化」については「卸売業・小売業」で全体と比較して10 ポイント以上高く出ている。
・なお、業種別に特色を見ると、「システムの拡張性の高さ」「サポート体制の強化」はどの業種でも全体的に期待されているが、「学術研究・専門・技術サービス業」においてはどちらも全体と比較して10 ポイント以上低く出ていることが判明した。「コア業務への集中、迅速なビジネス機会の確保」は全体の順位は低いが、「金融業・保険業」では全体と比較して5 ポイント以上高く出ている。
・従業員規模別に特色を見ると、「11~50 人」では「利便性の向上」が、「51~100 人」では「安定運用、可
用性が高くなる(アベイラビリティの強化)」が、「2,001~3,000 人」では「人件費の削減」「アウトソーシング
の活用」が、「3,001 人以上」では「システムの拡張性の高さ」「運用費用の削減」が全体と比較して10 ポイント以上高く出ている。
Q4. クラウド導入を検討した(する)際の、決め手となった点(メリットだと思う点)をお選びください。
(MA、n=1,000)
■クラウドに関する意識調査 クラウド導入を検討した(する)際に、障害となった点(デメリットだと思う点)■
・クラウドの導入を検討した際に障害となった点(デメリットだと思う点)については、「情報漏えい、セキュリ
ティのリスク」が41.7%で最も高く、次いで「運用費用の増加(24.1%)」「サポート体制は十分か(22.8%)」であ
る。
・全体で上位3 位に挙げられた障害となった点(デメリット)について業種別に見てみると、第1 位に挙げられた「情報漏えい、セキュリティのリスク」は、「金融業・保険業」「情報通信業」で全体と比較して5 ポイント以上高く出ていることが判明した。第2 位「運用費用の増加」については「学術研究・専門・技術サービス業」「卸売業・小売業」で全体と比較して5 ポイント以上高く出ていることが判明した。第3 位「サポート体制は十分か」については、「複合サービス事業及びサービス業」で全体と比較して5 ポイント以上低く出ている。
・業種別に特色をみると、「金融業・保険業」では「運用費用の増加」が、全体と比較して10 ポイント以上低く出ている。一方、「金融業・保険業」では「情報漏えい、セキュリティのリスク」が、「学術研究・専門・技術サービス業」では「初期費用の増加」「運用費用の増加」が、全体と比較して10 ポイント以上高く出ている。
・従業員規模数別に特色を見ると、「1~10 人」で「運用費用の増加」が、「2,001~3,000 人」で「仮想サーバ
やネットワークの応答速度」が、「3,001 人以上」で「障害発生時の切り分けが適切にできるか」が全体と比較して10 ポイント以上高く出ている。
Q5. クラウド導入を検討した(する)際に、障害となった点(デメリットだと思う点)をお選びください。
(MA、n=1,000)
■クラウドに関する意識調査 導入によって得られた成果
・クラウドサービスを現在利用していると回答した人に「導入によって得られた成果」を聞いたところ、「利便
性の向上」が29.1%で最も高く、次いで「運用費用の削減(23.3%)」、「セキュリティの強化(23.3%)」「人件
費の削減(19.1%)」となっている。「情報漏えい、セキュリティのリスク」がデメリットとして挙げられていた
が、「セキュリティの強化」を多くの企業が達成していることがわかる。
・業種別に特色を見ると、「建設業」で「仮想サーバーやネットワークの応答速度の向上」「災害対策、事業継続」が、「卸売業・小売業」で「サポート体制の強化」が、「金融業・保険業」で「利便性の向上」が全体より10 ポイント以上高く出ている。
・従業員規模別に特色を見ると、「11~50 人」で「初期費用の削減」「運用費用の削減」が全体より10 ポイント以上低く出ているが、「セキュリティの強化」は10 ポイント以上高くなっている。「501~1,000 人」では「安定運用、可用性が高くなる(アベイラビリティの強化)」「運用費用の削減」が、「1,001~2,000 人」では「安定運用、可用性が高くなる(アベイラビリティの強化)」が、全体と比較して10 ポイント以上高く出ている。
Q6. クラウドサービスを現在利用されている企業の方にお伺いします。
導入によってどのような成果が得られましたか。以下の中で当てはまるものを選んでください。
(MA、n=533 ※現在クラウドサービスを利用している企業)
■クラウドに関する意識調査 導入時に期待していたが得られなかった成果
・クラウドサービスを現在利用していると回答した人に「導入時に期待していたが得られなかった成果」を聞いたところ、「人件費の削減」が18.8%で最も高く、次いで「運用費用の削減(17.3%)」「初期費用の削減(13.5%)」となっている。
・業種別に特色をみると、「建設業」で「ライセンス管理が楽になる」「サポート体制の強化」「アウトソーシン
グの活用」が、「卸売業・小売業」では「セキュリティの強化」が全体より10 ポイント以上高く出ている。一
方「卸売業・小売業」では「運用費用の削減」が全体より10 ポイント以上低く出ている。
・従業員規模別に特色を見ると、「501~1,000 人」で「仮想サーバーやネットワークの応答速度の向上」が全体より10 ポイント以上高く出ている。
Q7. クラウドサービスを現在利用されている企業の方にお伺いします。
クラウドサービスの導入で、期待していたのに得られなかった成果はありますか。以下の中で
当てはまるものを選んでください。(MA、n=533 ※現在クラウドサービスを利用している企業)
■クラウドに関する意識調査 クラウドインテグレーターを選ぶ際に重視する点
・全体では、「サポートする技術や知識の幅広さ」が38.1%で最も高く、次いで「知識・ノウハウの豊富さ(34.4%)」「実績(32.2%)」である。
・業種別に特色を見ると、「情報通信業」において「知識・ノウハウの豊富さ」、「建設業」で「実績」「サポー
トする技術や知識の幅広さ」、「金融業・保険業」で「知識・ノウハウの豊富さ」「プロジェクト管理能力」が、「学術研究・専門・技術サービス業」で「わかりやすい料金体系」が全体より10 ポイント以上高い数値をマークした。
・従業員規模別に特色を見ると、「3,001 人以上」で「プロジェクト管理能力」と「提案力」がそれぞれ全体より10 ポイント高い数値をマークした。一方、「1~10 人」で「提案力」が、「51~100 人」で「知識・ノウハウの豊富さ」「作業や提案の正確さ」が、「2,001~3,000 人」でサポートする技術や知識の幅広さ」「わかりやすい料金体系」が、全体よりも10 ポイント低い数値をマークした。
・年商規模別に特色を見ると、「10 億円未満」の企業では「わかりやすい料金体系」が全体より5 ポイント以上高い数値となったが、「500 億円以上」の企業では反対に全体より5 ポイント以上低い結果となった。
また、「1 億円未満」の企業では「提案力」が全体より5 ポイント以上低い結果となったが、反対に「500 億円以上」の企業では全体より5 ポイント以上高い結果となった。
・「1 兆円以上」では、「実績」「提案力」「サポートする技術や知識の幅広さ」「知識・ノウハウの豊富さ」「作
業や提案の正確さ」「プロジェクト管理能力」「調整力」が全体よりも10 ポイント以上高い数値をマークする一方、「わかりやすい料金体系」は、全体よりも5 ポイント低い数値をマークした。
Q8. あなたがクラウドインテグレーターを選ぶ際に重視する点は何ですか。
以下から当てはまるものをいくつでもお答え下さい。(MA、n=1,000)
※参考:回答者属性
※2016年1月にインターネット調査にて実施。
※全国の法人において、自社の2013年~2015年のICT投資額を把握している(優先項目)、もしくは「取引しているベンダーの社名や依頼案件の概要」「現在社内で稼働しているシステムの稼働状況と社内評価」「現在自社が抱えるIT分野での悩み、今後の計画」について把握している、次長・課長以上の1,000名を対象として実施。
関連カテゴリー