ARPUは底打ちへ。NTT決算発表

2023年5月15日 13時33分更新


 NTTグループは2023年5月12日に発表した。NTTの2022年度の連結決算は、営業収益は13兆1,362億円(対前年8.1%増)、営業利益は1兆8,290億円(対前年2.4%増)、当期利益は1兆2,131億円(対前年2.7%増)で増収増益。いずれも過去最高を記録し年間計画を達成した。

営業収益の回復の要因は、旺盛なデジタル化需要の取り込みやNTT Ltd.における構造改革を通じたコスト削減などによるグローバル・ソリューション事業セグメントの増益によるもので、このうち為替の影響は約2800億円だった。また、法人事業及びスマートライフ事業の成長とARPU改善によるモバイル通信収入の減収幅縮小による総合ICT事業セグメントの増益などが挙げられた。

●NTTグループ
セグメント別
2023年の業績予想によると、営業収益は前年度比で減少する見通し。減少額は約7620億円となる見込みだが、同期間の営業利益は増加する見込み。

統合ICT事業分野
統合ICT事業分野は増収増益。法人事業の拡大、ネットワークの競争力強化、サービス創出・開発力強化とDX推進の3つのシナジーを創出するために、さまざまな取り組みを進めている。2022年には「ahamo大盛り」の提供、基地局スリープ機能の高度化による省電力化、リサイクル素材を活用した環境配慮型スマートフォンの提供などを行い、5Gサービスの販売を推進した。これらの取り組みによって、営業収益は6兆590億円(前期比3.2%増)、営業利益は1兆939億円(前期比2.0%増)となった。

地域通信事業
地域通信事業は減収減益。2022年は、全国の信用金庫と地域の中小企業をデジタルでつなぐための取り組みを実施。また、電気自動車の導入やEV蓄電池を活用した電力の最適利用を支援するソリューションの提供を開始や、東京ガスネットワーク株式会社、東京電力パワーグリッド株式会社と連携し、社会課題の解決に取り組んでいる。営業収益は3兆1,776億円(前期比0.9%減)、営業利益は4,205億円(前期比4.4%減)となった。

グローバルソリューション事業分野
グローバルソリューション事業分野は増収増益。2022年7月には、IoTセンサを使った新しいソリューション「Connected Product」を開発し、国際的な保険・物流会社向けに実ビジネスへの適用を予定している。また、2023年2月には、トヨタ自動車株式会社と共同でショッピングモール周辺の渋滞解消のための実証実験を開始した。ESG経営を促進するDX支援サービスや、TCFD開示対応支援サービスなど、各種サービスの拡大にも取り組んでいる。営業収益は4兆917億円(前期比13.2%増)、営業利益は2,656億円(前期比26.2%増)となった。

その他(不動産事業、エネルギー関連事業など)
その他は増収増益。2022年6月に名古屋に次世代型先進オフィスビルを開業し、デジタル基盤の開発や実証実験に取り組んだ。また、NTTアノードエナジー株式会社を中心に、再生可能エネルギー発電所の開発、アセットの活用拡大、脱炭素ソリューションの展開などを推進し、2022年7月に株式会社NTTファシリティーズの電力関連業務を統合した。これらの取り組みにより、営業収益は1兆8,070億円(前期比29.4%増)、営業利益は892億円(前期比23.0%増)となった。

新中期経営戦略について
NTTは、新たな価値の創造とグローバルなサステナビリティ推進に向け挑戦し続けることを基本的な考えとして発表した。IOWNなどの成長分野に投資し、イノベーションを通じてこれらの目標を達成することを計画している。
柱として「新たな価値の創造とグローバルな持続可能社会の実現」「顧客体験の向上」「従業員体験の高度化」を紹介し、成長分野への投資と同時に、顧客体験・従業員体験の充実を図る計画だ。特にスマートワールド関連には今後5年間で約3兆円以上の投資を実施するとした。

中期財務目標は、全社目標として2027年度の目標水準はEBITDA+20%増加(対2022年度)とした。成長分野はEBITDA+40%増加(対2022年度)だが、なかでも注力すべきグローバル事業は個別に、海外営業利益率10%(2025年度)を設定した。
また、それに加えサステナビリティ関連指標として、女性新任管理者登用率を毎年30%以上、温室効果ガス排出量を2040年度カーボンニュートラル、ネットゼロをめざす、従業員エンゲージメント率の改善を挙げた。
詳細リンク(NTTグループ中期経営戦略)

●NTT ドコモ決算
2018年度以来、4期ぶりに増収増益を達成した。営業収益は6兆590億円(前年比3.2%増)、営業利益は1兆939億円(前年比2.0%増)、当社株主に帰属する当期利益は7718億円(前年比2.6%)だった。

コンシューマ通信の減収減益を改善するため、モバイル通信サービス収入減少幅の縮小や、NWやチャネルの構造改革、販売施策等のコスト効率化をしたことが影響した。

セグメント別では、法人部門とスマートライフ部門は売上高と利益の両方が増加したが、コンシューマー通信は売上高と利益の両方が減少した。ただし、減少幅は縮小している。

2023年度業績予想と取り組み
NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアの統合ソリューションの提供強化やデータ利活用による共創ビジネスの拡大を大企業向けに、移動通信と固定通信の融合サービスによる業務効率化の提案やビジネスdアカウントの活用などを中小企業向けに挙げている。

また、スマートライフ事業では、金融サービスの拡大を目指して、d払いアプリを中心に投資、融資、保険などを提供を計画している。4月にスタートした映像配信プラットフォーム「Lemimo」は、月間アクティブユーザー数2000万を早期に達成することを目指している。

その他
スマートライフ事業では、動画配信サービスdTVがLemino(レミノ)に改名し、4月12日に再開始された。リニューアルに伴い、コンテンツの検索がより簡単になる新しいシステムが導入された。
Leminoのコンテンツを探しやすくする仕組みは、おすすめ画面とエモートライン画面の2種類トップ画面を持っている事にある。ユーザーがLemino内で自分のアカウントを持ち、友人や家族がコンテンツを推薦することで、より簡単にコンテンツを見つけることができるようにするソーシャルネットワークがある。このサービスは、自分でコンテンツを探すのではなく、ソーシャルネットワークを通じてコンテンツを発見することで、より簡単にコンテンツを見つけることができるようにすることを目的としている。

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